吟遊詩人

初めて好きになった歌手って覚えてますか?


その歌手は今でも心に突き刺さりますか?





30年前だったと思う。


日曜日の午後、昼食を食べ終わりぼんやりTVを見ていたんだ。



居間に置いてあった割とデカめの茶色いブラウン管のTVの中では今や大御所のお笑い芸人が若手の芸人を熱湯に突き落としたりしてた。


夢中で見ていた訳ではない。


垂れ流される映像と音を横目に漫画を読んでたんだ。




ソーリーベイベー♪

誰かさんみたいに~俺に明日は見えないから~♪




お酒のCMから流れてきた音楽に耳を奪われた。


今まで聞いた事も無いハスキーボイス。


誰のなんて歌かなんてその時は知る由もなかった。





それから二十数年


深夜に何気なく見ていたTVでは探偵のドラマが始まろうとしていた。


雰囲気は古臭いがスタイリッシュなオープニングに目が止まり、ちょっと真剣に見始めたんだ。


そこには探偵とは古くの知り合いだという金髪でボロボロの服を着た渋いオヤジが映し出されていた。


演技は上手くは無かったと思う。


ただ、キャラクターの強烈さにヤラレ見入っていた。


ドラマも終盤に差し掛かり、挿入歌が流れた時にあのハスキーボイスが




あわてんなよ♪雨が上がったからっていきなり晴れる訳はないさ♪




と、歌い出した。


ガキの頃に聞いたハスキーボイスがさらに掠れてドスの効いたハスキーボイスになっていたが、あのハスキーボイスだ。


エンドロールで金髪のオヤジと挿入歌の歌手が同一人物だと知る。




Sion




金髪オヤジの名前だ。


翌日すぐにTSUTAYAに行ったが見つからなかった。


その足でtowerrecordに単車を走らせ、やっと見つけたんだ。


とりあえず二枚組のベスト盤を手に入れ、オンボロのサニートラックに無理矢理取り付けたCDデッキに一枚目のCDを飲み込ませたんだ。


もの哀しいメロディに無情さを綴った歌詞がハスキーボイスによって吐出される。


二曲目、三曲目と聞き進めていくと




ソーリーベイベー♪



30年前の昼下がりに聞いたあの曲だ。


段差の度に音飛びがするサニートラックをコンビニの駐車場にぶち込み聞き入る。


もうね、ヤラレましたよ。





Sionとの再開から十数年


今じゃYouTubeで映像付きで見れちゃうんだもん Sion。


随分助けられました。あなたの声で慰められ、励まされ、怒られ、背中を押して貰いました。


決して綺麗では無い掠れた声で歌うSionはまるで世界一透き通った声で囁きかける吟遊詩人の様なんだ。




いつでもここにいるから帰ってきていいんだよ。
そう思えばあと一つ二つ出来る我慢も増えるでしょ?
頑張れ、頑張れ。




そう言って吟遊詩人は今でもオレを諭すんだ。

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