秀才とクズ

俺は将来大変な思いをしたくないから、今勉強してるんだ。


中学3年の春にSが言っていた言葉だ。


Sとの出会いは中学1年の時。

1組に面白い奴がいるらしい

オレはさほど興味は無かった

1組に可愛い子がいるらしい

食いついたんだ。



太目のズボンのスソを引きずり、かかとの潰れた上履きをパタパタ言わしながら、可愛いと噂の子を見るために1組に向かったんだ。

そこで見たのは、脂ぎった頭髪にすきっ歯のゴリラ似の男だった。

ふざけていたのか、バスケットのディフェンスの様なポーズをしながら反復横跳びの様な動きで笑いの中心にいた。




こいつがSか…

オレはこの手のおふざけが嫌いだったから半分呆れ気味でゴリラを見ていた。

この時点でのSの印象は最悪で、この先交わる事は無いと思ってたんだ。


中学で初めてのテストが終わったある日の事


1組のSが満点らしいぞ

頭のいい連中が何やら騒いでいた。


ふーん、あいつ頭いいんだ?

オレの興味を特にそそる事も無く、Sは頭のいいゴリラ程度の認識で、オレの生活に交わる事も無く学校生活が過ぎていった。


時は過ぎ、3年のクラス発表の日


一緒だな

そう声をかけて来たのは小学校から仲の良かったKだ。

体育館の壁に張り出されたクラス表を見ながら

んだな

と、オレ。

オレの視線はクラス表から離れないままだった。

オレのクラスには、ものの見事に問題児が集められていたんだ。


めんどくせーな


そう思いながらクラス表を目で追っていると、Sの名前もあった。


ゴリラもいるんだ?

そんな事より新学期のイザコザに頭を悩ませ問題児達との衝突のシュミレーションをする事で頭がいっぱいだった。


新学期初日


オレは一年の頃から頭髪検査や持ち物検査を避ける為、先生達が校門に立ち始める前に登校を終えていた。

3階のトイレの窓から続々と登校してくる生徒を見下ろし、多少なりとも緊張を落ち着けていたんだ。

よぉ

不意に後ろから声をかけてきたのは2年の時に揉めたTだった。

同じ組だな

続けざまに話始めたTに警戒しつつも、何事も無かったように会話を始めた。

まぁ仲良くやんべよ

そんな感じでデンジャラスな展開は何も無く新学期が始まっていった。


こいつSっていうんだ。

TとSは一年の時に同じクラスで、目立ちたがり屋のTとSは系統は違うが繋がっていた。

Sを紹介されたオレは別に拒否する理由もなく、行動を共にする事になる。

Sは秀才なのだか、オレとは違う視点で世の中を斜に見ていた。

秀才の中にある闇に触れるにつれ、同じ匂いを感じ一緒にいる事が多くなっていたある日。

お前どこの高校行くの?

Sが問いかけてきた。

わからん 行かないかも

そう答えると

お前はわからないかもしれないけど、今勉強しておかないと、将来仕事に困るよ。

ふーん

当時のオレは、将来の事など何も考えておらず、興味無さげに答えるしかなかった。



Sは県内トップの高校に進み、東京の有名大学を卒業して大手銀行に入行して、今ではある程度偉くなってるらしい。

オレはというと、当時のSの助言を聞かず、あいつの予言通り色んな事に困る人生を送っている。


この間Sに会ったんだ。


世間から見れば成功者と失敗者に見えるだろう。


オレとあいつの間にそんなしがらみはない。


ただ、いつも言われる事がある。


俺の言うこと聞けって


聞こえねーよ

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