琥珀色のため息~あの日の夕暮~

今週のお題  お気に入りの紅葉スポットから一つ。

 

 

 

うちの近所に一つ森公園という、小さな丘の上にある公園がある。

 

丘のてっぺんは開けており、休日は家族連れなどが集まり、運動したりバーベキューなどを楽しめる。

 

 

 

 

一つ森いかね?

 

 

そう言ったのは藤原だった。

 

 

柔道部だったこいつ。

 

 

いつも洗っていないテカテカの頭髪にゴリラ顔で、とてもとても、女に縁があるとは言えないやつで、本人も自覚していた。

 

 

なんで一つ森よ?

行くのめんどくせーし。

 

 

頼むって。

 

 

そんなこんなで、自転車漕いで、わざわざ丘の中程の池がある休憩スペースまで来た。

 

 

あのさ、保坂っているべ?

そうそう、地味な方の保坂。

 

 

好きなんだ、俺。

 

 

(笑)マジか!?

おまえが?そのツラで?(笑)

 

 

 

・・・本気なんだって。

 

 

 

・・マジか?

話してみろよ。

 

 

そう言って、ゴリラは語りだした。

 

好きになった経緯から始まって、今の切なく辛い気持ちまでを、ゴリラは女の子の様に吐き出した。

 

 

んで、どーすんの?

告白するの?

 

 

…いや、無理でしょ。

だって保坂さ、バスケ部の高橋先輩の事が好きらしいし。

 

 

 

それは、ただの憧れだべ?

まずさ、清潔にしろよ。

それからオシャレしてさ。

 

んで、話した事あんの?

 

 

…おはようって言った事ある。

 

 

会話じゃねーじゃん。

 

 

 

この時はまだ夏前。

丘から見える町並みは緑一色で、公園の木々も、さあこれからだって感じで

枝葉を伸ばしてたんだ。

 

 

 

文化祭の作り物で、花のアーチを作るグループを決めます。

 

やりたい人!?

 

 

保坂と仲が良かった中村が手を上げると、保坂も遠慮がちに手を上げた。

 

 

すかさずゴリラも手を上げた。

 

 

この頃のゴリラは、短く整えた髪で、制服の肩にフケが溜まってるなどということが無く、毎朝通学路にあるローソンで、試供品のギャッツビーの香水を、これでもかってくらいかけて来てた。

 

三ヶ月程掛けて、昨日HEY!HEY!HEY!見た?位の会話も出来る様になっていた。

 

 

あ、じゃあ俺も

 

 

って手を上げたのは、野球部の佐々木だった。

 

佐々木とゴリラは元々仲が良く、ゴリラが保坂を好きな事は知っていた。

 

 

上手くやれよって、声をかけてオレはいつもの様に図書室の隅っこのお気に入りの席にサボりにいった。

 

 

こういう時って、遅くまで学校に残って作業して、暗くなったから送るよなんつって、恋が芽生えたりするもんで。

 

 

帰る方向一緒だろ?送ってやるよ。

 

 

 

って佐々木は保坂と帰る日が多くなった。

 

不運極まって、ゴリラは逆方向だったんだ。

 

 

ゴリラは、そりゃー歯噛みしてさ。

佐々木に散々釘刺したんだけど、結局佐々木と保坂は付き合っちゃうんだ。

 

 

佐々木に対して一番ムカついたのがオレで、

 

ゴリラの気持ち知ってたんだろ?よくそんな事出来るな?

 

 

って言ったんだけど、ゴリラが

 

もう、いいから

 

 

ってオレを止めたんだ。

 

 

 

一つ森いかね?

 

 

失恋の傷と、友達の裏切りの傷を引きずったゴリラに誘われたのは、木々の葉っぱが色付き出して、丘から見下ろす町並みも黄色くなった今時期だった。

 

どした?まだ吹っ切れないのか?

 

 

あ、ああ、…まぁな。

…なんか、綺麗だな、紅葉。

 

なんだよ?年寄りくせえな。

なんか話あるんだべ?何よ?

 

 

2組の渡辺って知ってる?吹奏楽部の。

 

 

……好きなの?

 

 

ゴリラの新しい恋が始まった嬉しさと、不憫さと、呆れた感情を抱きながら、池に浮かぶ黄色い銀杏の葉に小石をぶつけた。

 

 

 

ゴリラはその後、やら二十、やら三十

を迎え、一昨年結婚したよ。

 

 

 

嫁と赤ん坊連れて一つ森で遊んでる写真に映る赤ん坊の顔は、ゴリラにそっくりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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